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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

化学物質のリスクアセスメントに、改良型コントロールバンディングを使ってはいかがでしょうか?

      2017/09/23

法改正により化学物質のリスクアセスメントが義務化されたのは、平成26年6月です。
それから2年が経ちましたが、製造業などを中心に実施されているところも多数あります。
私は建設業に近く接しているのですが、時折リスクアセスメント記録をみる機会も増えてきました。

話を聞いていると、化学物質のリスクアセスメント実施については、義務だから実施しているが、難しいとのことでした。
作業環境測定士や化学に強い方がいると、すんなり話は進むのでしょうが、そうでない場内は手探りになってしまうようです。
私がよく話をする建設業は、化学との関係性は少ない業界なものですから、苦労されています。

中でも、難しいのは見積もりと評価ではないでしょうか?

一般の危険性又は有害性に対するリスクアセスメントでは、主に2つの項目で見積もりを実施します。

・重篤度(重大性)
 怪我や疾病の大きさ

・頻度
 危険に近づく頻度、事故が発生する確立

中災防ではさらに、次の項目でも見積もりします。。

・可能性
 危険に近づいた際、または事故が起こった際に、災害が発生する確立

これらの見積もりは、自分の仕事を見ると、さほど難しいものではありません。
自分が今やっている作業場を観察すると、「ここで怪我するな」などは見えてきます。

例えば、クレーンを使った荷降ろし場では、荷物の配置上、うっかり荷の下に入ってしまうようになっているなどは、危険頻度が大と評価できます。

しかし化学物資となると、成分等に精通していないとわかりにくいものです。
塗装業では有機溶剤を使用しますが、作業者が具体的にどのような有害性があるかまで理解しているかというと、心もとないでしょう。

大量に吸い込んじゃダメとか、換気して作業するなどの対策はされていますが、なぜ対策が必要なのかは不明瞭なケースが少なくありません。

化学物資のリスクアセスメントは、その対策の根拠を明確にするのです。
根拠となる危険性又は有害性の見積もりですが、基本的には上記の項目になります。
つまり、「重篤度」と「頻度」です。

「重篤度」は、物質を体内に取り込んだときの危険性又は有害性の程度です。
例えば、皮膚に接触すると炎症を起こすとか、体内に吸引されると健康障害になるなどです。

「重篤度」は一般的なものと、同じですね。
しかし「頻度」は異なります。

化学物資のリスクアセスメントでは、「頻度」は「ばく露量」という項目になります。
「ばく露量」とは、対象となる化学物質に「曝(さら)される」、言い換えると接触する量や時間です。

一度に大量の物質を扱う場合は、ばく露量は増えます。
一度に少量扱う場合でも、長時間扱うのであれば、これもばく露量は増えます。

危険性・有害性のある物質に接触、接近する機会が多くなれば、健康を損なう可能性が高くなるのです。

index_arrow リスクアセスメントをやってみる

リスクアセスメントは全ての化学物質について実施することが義務付けられてはいません。
対象となるのは、平成29年9月現在で、663物質です。法改正があった平成27年では640物質でしたが、増えました。

この663物質の内、接触する機会はほとんどないでしょう。
しかし中には頻繁に接触する物質もあります。例えば塗料によく含まれるトルエンや、軽油やガソリンなどがあります。

対象外の物質については、リスクアセスメントは努力義務という扱いです。なるべくならやってくださいね、というものですね。

さて、対象となる物質内に、取扱うものがあればリスクアセスメントを行います。

リスクアセスメントを行うにあたって、最初にやるべきことは、情報収集ですね。
つまり、SDS(安全データシート)を手に入れることからです。

SDSとは簡単に説明すると、製品の成分、危険性・有害性や取り扱い時の注意などをまとめたものです。
製造メーカーは必ず作成しています。

詳細な説明は、こちら。

中災防 SDSとは

SDSには、どんな危険があるかなどを、絵で表示していますので、リスクアセスメントでは特に注目です。

職場の安全サイト  GHSのシンボルと名称

特にドクロマークは、「急性毒性」を示すので、危険性・有害性が大です。

リスクアセスメントの重篤度、つまり危険性や有害性はSDSを参考に行います。

「重篤度」の見積もりのあとは、「ばく露量」です。
このばく露量がいかほどのものか見積もるのが、化学物質のリスクアセスメントの大変なところです。

物質によって、ばく露限界量は異なります。
例えば、8時間ばく露限界量で比較すると、ベンゼンは0.5ppmですが、アセトンは250ppmです。
非常に極端な表現をすると、アセトンは何か臭い状態でも大丈夫ですが、ベンゼンは何も感知しないくらいの量でもダメということです。

この物質ごとのばく露限界量を踏まえ、どれくらい接するかを見積もります。

ばく露量の把握で確かなのは、実際に調べてみることです。
とはいうものの、知識もなく簡単には調べられるものではありません。
作業環境測定士や化学系に強い方に頼むのがよいでしょう。

これら手前味噌になるのですが、化学部門の労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントに依頼するのもよいかもしれません。(私は残念ながら化学ではないのですが。)

調査方法は、場の測定と個人ばく露量測定があります。

個人ばく露量測定の方が、海外では一般的だそうです。
これは作業者に個人サンプラーを着けて、通常の作業してもらい、化学物質を捕集する方法です。

場の測定は、作業場に捕集装置を設置し、濃度が高い場所、時間などを中心に測定するものです。作業環境測定では一般的な方法ですね。

また場の測定では、検知管を使った方法もあります。
検知管は、実際に作業者の前で使ってみることで、教育にも使ったりもするようですね。

何と検知管は、Amazonでも買えるようですね。

このような定量的なばく露量を出すことが、確実性が高いです。
しかし、コストなどもかかります。

建設業で、一時的な塗装作業で、作業環境測定を行うのはハードルが高いのも事実です。

そこで使えるのが、ツールなどを使用することで、ばく露量等を推定して、見積もる方法です。

使用するツールとして、よく紹介されるのが、コントロールバンディングというものです。

コントロールバンディングは、厚生労働省がサービスを提供してます。

リスクアセスメント実施支援ツール

これはSDSを参考にし、化学物質や使用量などを入力すると、リスクアセスメントしてくれるという、とてもありがたいサービスです。
とてもありがたいのですが、難点があります。

それは、対策が非常に安全側に配慮しまくった結果が出るというものです。
例えば、エタノールを少量使用する場合でも、局所排気装置を使えなどの結果が出ます。
対策としてオーバーですね。

手軽なのはメリットですが、結果として採用し難いのです。

そんなメリット、デメリットがあるコントロールバンディングですが、ある情報を得ました。

先日、日本労働安全衛生コンサルタント会の安全研修に出たところ、東京工業大学の橋本晴男先生がお話されていました。
テーマは、「化学物質のリスクアセスメントの戦略的な進め方」というものです。

この中で、中災防による改良コントロールバンディング(JISHA方式)というものを紹介されていました。
ベースは、厚労省提供のものと同じですが、入力項目として「換気状態」、「使用時間・頻度」、「服の汚染」が追加されています。

この追加された項目がポイントで、かなり現実的な評価と対策が示されるようになっています。

上記例のエタノール使用で、局所排気装置を使えなどは出てきません。

詳細については、中災防の研修があります。

しかし全部最初からやるのは大変です。

そこで、この改良コントロールバンディングサービスをしているサイトがあります。

福井大学が中災防のテキストを元に、ツール化したサービスを提供されています。

福井大学工学部技術部安全衛生管理推進グループ 化学物質リスクアセスメント

※中災防は、別途でツールを開発しているようです。

一度に入場できるのは10人までとか、1度に使えるのは30分までの時間制限などがありますが、参考になります。

※現在は、一度に20名までと改良されているようです。

SDSを手に入れたが、どうしたものかわからない場合は、改良型コントロールバンディングも使用してみてはいかがでしょうか。

最後に、化学物質のリスクアセスメントは対象物質については、義務です。
リスクアセスメントを行い、その上で有効かつ現実的な対策をすることが求められます。

そして、忘れてはならないのが、一度リスクアセスメントをやって終わりとしないで下さい。
必ず残留リスクについての評価もしてください。

対策として保護具を使用すると決定したとしても、それでもリスクはゼロではありません。
むしろ対策後の残留リスクをしっかり把握することが大事です。

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