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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。労働安全コンサルタント角田淳による、安全衛生で使えるアイデアや教育ツールのご紹介

安全に車両系建設機械を使用するための措置

      2015/05/30

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建設業において、車両系建設機械がなければ、仕事にならないと言っていいでしょう。

今さら手で土を掘ることはできません。
古くなった家やビルを解体するのも、手では無理です。
何百メートルものトンネルを手で掘るのは、途方も無い時間がかかるはず。
ましてや何十メートル、何百メートルもの地下深くまで基礎を打ち込むのは、機械がなければ不可能です。

今あるほとんどの工事のスタイルは、機械がなければ成り立たないのです。

今回は、そんな車両系建設機械についてです。

車両系建設機械といっても、これだけではどんなものがあるのか、ピンと来ないかもしれません。

簡単に言うと、車のように乗って運転する建設機械のことです。
車のようにといったのは、タイヤ付きのものもあれば、クローラー、つまりキャタピラーが付いているものもあり、舗装路以外の土やぬかるんだ泥のような不整地でも自由に動き回ることができるからです。

土木工事は、河川や山間部などでも仕事をするので、不整地や悪路で自由自在に動けることは必須になります。

ちなみにですが、履帯式の駆動は、難しくは無限軌道といい、他にはクローラーなどと言います。しかしこれらの表現よりもキャタピラーと言ってしまうほうが、イメージしやすいかもしれません。
しかしキャタピラーは企業名らしく、一般名称ではないようなんです。
そのため法律の条文では、クローラーと表現されていますので、それに合わせています。

車両系建設機械の分類については、安衛令別表第7に規定されています。

安衛令別表7

機械名がたくさん挙げられていますが、大きく分類すると6種類になります。

 1. 整地・運搬・積込み用機械
 2. 掘削用機械
 3. 基礎工事用機械
 4. 締固め用機械
 5. コンクリート打設用機械
 6. 解体用機械


この中でも特に馴染みが深く、最も使用しているのは、2の掘削用機械ではないでしょうか。

掘削用の機械はの代表は、大きなバケットをつけたショベル機でしょう。
油圧ショベル、バックホー、ユンボ、パワーショベルなどの名称があります。
若干の差異はあるものの、条文では主にドラグ・ショベルと呼ばれています。
このブログでは、一般的にイメージしやすいのではと思い、ショベルカーで統一しています。

この機械の用途は、土を掘ることです。
主に機体より下部を掘りますが、採石用に機体より上部の崖を掘るものもあります。

アームの先端部は通常、爪つきのバケットですが、物を掴むための爪や振動させるバイブレーター、更にはコンクリートを壊すブレーカーなどとアタッチメントを取り替えることができます。

土木工事では、ほぼ毎日のように使用する機械です。

その他の機械も多種多様ではありますが、紹介していくと際限がないので、割愛します。

これらの車両系建設機械については、過去に書いたブログでも、触れたことがあります。
条文に紹介する前に、それらを簡単に紹介します。

まず、これらの機械を使用するには、特別教育または技能講習を修了しなければなりません。

安全衛生教育と有資格作業について1 「特別教育」

安全衛生教育と有資格作業2 「就業制限のある業務」

特別教育と技能講習の違いは、機体の重量です。
3トン未満が特別教育が必要になり、3トン以上が技能講習が必要となります。

使用する作業者も規制がありますが、事業者も車両系建設機械を使用させるにあたって、様々な措置をとらなければなりません。

元方事業者の責務

特に複数の下請けを使用する現場で、元方事業者となる場合は、機械等が転倒しないような措置を講じ、労働者にも徹底させなければなりません。

また、注文者として下請け業者等に、大型のショベルカーやくい打ち機等を使用させる場合にも、労災防止のための措置を講じなければなりません。

特定注文者の責務

作業を行うにあたって、作業間の連絡や作業指示の系統、立入禁止などの行わなければなりません。

また、大型の機械は一度所有してしまうと、維持管理に手間とコストがかかります。
そのため、よほど使用頻度がある場合等を除き、基本的にはレンタルするというのが多いようです。

車両系建設機械をレンタルする事業者、つまり機械貸与者も、貸与するにあたって、行わなければならないこともあるのです。

機械の貸与に関わる措置

貸与者は、一部の機械を貸与する際に性能等を書面で交付しなければなりません。
3トン以上の大型の機械を貸与する場合は、この条件に当てはまるのです。


以上が、今まで書いたものの中で、車両系建設機械に関するものです。

車両系建設機械は、建設業作業の中心になるものと言っても過言ではありません。
そのため、規制や約束事も非常に多く、細かく規定されています。

それは機械の仕様であったり、作業方法、点検などがあります。

それらについて少しずつ見ていこうと思います。

【安衛則】

第2章 建設機械等

第1節 車両系建設機械

第1款 総則
(定義等)
第151条の175
この節において解体用機械とは、令別表第7第6号に掲げる機械で、
動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。


2 令別表第7第6号2の厚生労働省令で定める機械は、
  次のとおりとする。
  1)鉄骨切断機

  2)コンクリート圧砕機

  3)解体用つかみ機

まずは、上記の安衛令別表第7第6号の機械について。
これは後から追加された条文ですね。
解体用の機械には、このようなものが含まれるということです。

ところで、「○条の2」などの枝番がある条文は、当初はなく、後に追加されたものですが、175も追加されているのは、すごい量だなと思います。
車両系荷役運搬機械が丸ごと追加ですから、これだけの量になったのでしょうけども。

さて、次の第152条からが、仕様や作業方法などについてです。

第1款の2 構造

(前照灯の設置)
第152条
事業者は、車両系建設機械には、前照灯を備えなければならない。
ただし、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている
場所において使用する車両系建設機械については、この限りでない。
(ヘッドガード)
第153条
事業者は、岩石の落下等により労働者に危険が生ずる
おそれのある場所で車両系建設機械(ブル・ドーザー、
トラクター・ショベル、ずり積機、パワー・ショベル、
ドラグ・ショベル及び解体用機械に限る。)を
使用するときは、当該車両系建設機械に堅固なヘッドガードを
備えなければならない。

構造についてですが、前照灯とヘッドガードをつけなければなりません。
前照灯はライトのことです。ヘッドガードは運転席の屋根になります。

一応条件があり、前照灯は照度が確保されている場合は求められていません。
ヘッドガードは、落石の危険がない場所では、必要ありません。

というものの、今はどの機械であっても標準装備なので、電球が切れているなどの整備不良や改造を施している以外では、違反することはないと思います。

ヘッドガードについて、混同されやすいことがあります。
ヘッドガードの目的は、落石等から運転手を守るためのものです。機械が点灯した場合に、押しつぶされないようにする目的のものではありません。
機体の下敷きになっても耐えられる強度までは、ないので注意です。

さて、作業を着手する前に、やらなければならないことが続きます。

第2款 車両系建設機械の使用に係る危険の防止
(調査及び記録)
第154条
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、
当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の
危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所に
ついて地形、地質の状態等を調査し、その結果を
記録しておかなければならない。
(作業計画)
第155条
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、
あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに
適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を
行なわなければならない。

2 前項の作業計画は、次の事項が示されているもので
  なければならない。

  1)使用する車両系建設機械の種類及び能力

  2)車両系建設機械の運行経路

  3)車両系建設機械による作業の方法

3 事業者は、第1項の作業計画を定めたときは、
  前項第2号及び第3号の事項について関係労働者に
  周知させなければならない。
(制限速度)
第156条
事業者は、車両系建設機械(最高速度が毎時10キロメートル以下の
ものを除く。)を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、
当該作業に係る場所の地形、地質の状態等に応じた
車両系建設機械の適正な制限速度を定め、それにより
作業を行なわなければならない。

2 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の制限速度を
  こえて車両系建設機械を運転してはならない。

工事を行うにあたって、着手する前に、作業現場の調査を行わなければなりません。
土壌の性質はどうか、水はけは、地山が崩壊しそうか、転落のおそれはあるかなど、機械を持込み、作業するための調査を行います。

これは現地の測量等とともに行われるものでしょう。

調査した記録は、必ず記録しておかなければなりません。
この記録が、工事の間の安全な機械運用方法の基礎データになるのです。

さて調査し記録しただけでは、ただのデータ収集にすぎません。

この調査記録を元に、安全で最適な作業計画を作ります。
この計画は単独ではなく、施工計画書の中に含まれるものです。

機械の作業計画には、次のことを含まなければなりません。

1.使用する車両系建設機械の種類及び能力

2.車両系建設機械の運行経路

3.車両系建設機械による作業の方法


機械の選定から作業方法などを、しっかり計画をたてなければなりませんね。

そして当然のことながら、作業性だけを重視してはいけません。
労災防止のための対策が検討された上で、最大効率の作業方法でなければならないのです。

この計画は、実施されてこそ意味のあるものです。
計画は立てたが、実際の現場は全然違うことをしているでは、問題ですよね。
実際に作業を行う作業者に、計画をしっかり伝え、計画に従い作業するように、まとめるのも事業者や現場監督の役割なのです。

事故事例を見ると、作業計画が徹底されないまま、作業を行い事故に至ったというのも、よく見受けられます。

さて、もう1つ計画の中で取り決めておかなければならないことがあります。
それは、機械の制限速度です。
時速10キロ以下の速度しか出せないものは、対象外ですが、時速10キロより早く走れるものには、制限速度を設けなければなりません。

地面がガタガタなのに、猛スピードで走っていたら、どうなるかは分かりますよね。

地形や地質などから、制限速度を設けるのも、作業前に行わなければならないことなのです。

(転落等の防止等)
第157条
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、
車両系建設機械の転倒又は転落による労働者の危険を
防止するため、当該車両系建設機械の運行経路について路肩の
崩壊を防止すること、地盤の不同沈下を防止すること、
必要な幅員を保持すること等必要な措置を講じなければならない。

2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系建設機械を用いて
  作業を行う場合において、当該車両系建設機械の転倒
  又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、
  誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を
  誘導させなければならない。

3 前項の車両系建設機械の運転者は、同項の誘導者が行う
  誘導に従わなければならない。
第157条の2
事業者は、路肩、傾斜地等であって、車両系建設機械の
転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所に
おいては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを
備えたもの以外の車両系建設機械を使用しないように努めるとともに、
運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。

土木作業は、土の地面の不整地で行うことが多いです。
いかに足元がクローラーであっても、ガタガタするのは避けられません。
そのため、機械の運転にあたっては、転倒しないということが重要になります。

同じ場所ばかりを走って、ワダチを深くしてしまうと、足元をとられてしまうかもしれません。
すぐに急斜面のある路肩を、重い車体で走っていると崩壊するかもしれません。
そのような転倒などの危険を防止するための対策を行わなければならないのです。

特に注意しなければならないこととして、次のことが挙げられていますね。

1.路肩の崩壊を防止する。
2.地盤の不同沈下を防止する。
3.必要な幅員を保持する。


不同沈下とはワダチなどのことです。
幅員な走行できる道幅ですね。あえて車体が通れるギリギリの経路は選ばず、別の経路を走行させるようにするといったことです。

これも作業計画に含まれるのですが、特に事故として多いので、あえて別途取り上げているのです。

舗装路を走るのではないので、一様の地盤ではないのは、走るだけでもリスクのあることと言えます。
そのような場所だからこそ、しっかり計画を立て、作業者も理解し、実行する体制が重要です。

もし不幸にも機械が転倒してしまった場合に備えて、車体は運転者を守るための保護構造とシートベルトを備えた仕様にしなければなりません。

この転倒時保護構造は、先のヘッドガードとは異なります。
車体に押しつぶされないようにするための構造ですので、屋根だけでなく運転席全体ですね。
また転倒時の勢いで、運転者が車外に放り出され、車体の下敷きになるという事故も少なくありません。
その車外放出を防ぐためにも、シートベルトは大切です。
しかし現状は「努めなければならない」とありますので、義務ではありません。
とはいうものの、自分の身を守るためにも、車の後部座席と同様、着用する習慣を身につけるのがいいでしょうね。

さて、条文の数が多いため、今回はここまでとし、残りは次回まとめます。

まとめ。

【安衛則】

第151条の175
解体用機械の種類について。
第152条
車両系建設機械には、前照灯を備えなければならない。
第153条
岩石の落下等のおそれのある場所で車両系建設機械を
使用するときは、堅固なヘッドガードを備えなければならない。
第154条
車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、作業場所の地形、地質等を調査し、記録しておかなければならない。
第155条
車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、調査結果を元に作業計画を定めなければならない。
第156条
車両系建設機械の適正な制限速度を定めなければならない。
第157条
車両系建設機械を用いて作業を行うときは、転倒防止のための措置をとらなければならない。
第157条の2
転倒又は転落の危険のある場所では、車両系建設機械の運転者にシートベルトを着用させるよう努めねばならない。

 

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