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「『いってきます』といった人は『ただいま』と言う義務がある。成り立て労働安全コンサルタント”いてたま”による、労災防止アイデア

事故事例ケースワーク:東京丸の内工事現場で墜落事故(平成29年8月11日発生)

      2018/05/14

 
墜落・転落の労働災害は、死亡事故の型別件数としては、最も多くなっています。
例年、全体の約25%を占めています。この傾向は、近年変わりありません。
 
高い割合を占める墜落・転落災害は、優先課題であると言えます。厚生労働省をはじめ、各都道府県労働局や監督署の啓発活動、そして各事業者での取り組みなどが積極的にされています。
 
高いところから落ちると死ぬ。
これはほとんどの方が知っていることだと思います。実際に落ちた経験がなくとも、分かるはず。
しかし、事故は跡を絶たないのが現実です。
そして新聞記事を見ると、墜落事故が報道されることも少なくありません。
事故報道は、決して遠くの出来事ではないのです。明日は我が身かもしれません。
 
事故とその結果としての死傷災害は、当事者やその方の家族、友人、会社にとって大きな痛みをもたらします。そのような記事を目にする私たちが、痛みを分かち合うことは出来ませんが、学びとすることはできます。
 
事故を教訓と作業場の改善につなげるためには、事故事例の研究する方法があります。
職長・安全衛生責任者教育でも、事故事例研究の演習があるので、職長をされている方は記憶にあるかもしれません。
 
事故は日々報道されています。
この報道記事を用い、自分たちの作業場で同種の事故を防ぐために何が出来るかを決めることは、質の良い安全衛生教育になるのではないでしょうか。
 
事故ケースワークとして、今回はこの事故を取り上げてみます。
 

事故事例

東京丸の内工事現場で墜落事故。3名死亡。
(平成29年8月11日発生)
 
 
事故概要  ビルの建替え工事にて、5階の内壁基礎工事を行っていた作業者が墜落。2人を巻込み地下3階までの約25mを墜落、死亡した。

作業はエレベーターピット開口部に鉄板(畳1~2畳程度)を敷き、作業を行っていた。鉄板も作業者とともに落下した。
今回の教育の目的 開口部上又は付近での作業時に、墜落災害防止を行なわせる。
教育で使用するもの 1.記入用演習シート(今回の配布資料です)

2.事故の記事
今回の教育の
大事なポイント

(教育後、どのような行動を期待するか)
 1.墜落危険箇所を発見、対策案を報告してくる。

2.墜落防止柵などは点検のチェックリストを漏れなく記入する。 
オープニング
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。
 
事故事例での目的は、事例の教訓を、具体的対策として実施することを強調しましょう。
 
事故の起こしてしまった会社名や被害者名などは、ケースワークには不要なので、割愛してもよいです。
演習では、Aさんなどの仮名にしてしまうのがよいでしょう。 
 
1.事実の確認 事故の記事、資料P2
事故のケースワークで、最も大事なことは、事実を把握することです。
今回の事故の記事を読み、事実を洗い出していきましょう。
記事は上記の概要、またはネットニュースからポイントを抜粋してもよいと思います。
また、別の記事では、事故時の状況がより詳しく書かれているので、参考にして下さい。
記事から、事故の原因となったポイントをピックアップしていきます。
 

(演習)

読み上げた新聞記事から、事故の原因となったポイントを洗い出します。グループ内で話し合い、資料P2に記入します。洗い出した事実に対して、リスクの見積もりを行います。
(5分)

ここでは、あくまでも記事から読み取れる事実のみピックアップします。
憶測や推測は省きます。
また、なぜ事故になったのかという原因追求も行いません。これは次のステップです。
新聞記事では、詳細な状況は分からないことが多いです。拾い出せる範囲で書き出してもらいましょう。
もしかすると、真相は全く別だったこともあるでしょうが、今は手元にある情報から検討します。
1~2個、原因となるポイントが洗い出せたならOKだと思います。
リスクの見積もりは、普段されているルールでやっていただいて構いません。
今回は、可能性と重篤度を各3点満点で、足し算で計算する方法をとっています。
事業所によっては、点数の付け方が異なったり、点数ではなく記号で表したり、「重篤度」「頻度」「可能性」の3軸で見積もったりもあると思います。慣れている方法で行ってください。
 
参考 見積もり基準
参考 見積もり評価(優先度の付け方)
演習後は、教育担当者が洗い出した事実を伝える、もしくは1~2人に発表してもらってもよいと思います。
 
2.原因・問題点の整理 資料P3

(演習)

洗い出した事実のポイントの内、リスクポイントが高いもの(優先度が高いもの)について、なぜ事故につながったのかをグループ内で話し合い、記入しましょう。

出てきた原因・問題点もリスクの見積もりを行います。
(10分)
原因・問題点は少なくとも2つは洗い出してもらいましょう。
 
記事の短い文章から原因や問題点の考えるため、考える材料は乏しいです。
そのため、推測を含むこともあるでしょうが、この演習ではOKとします。ただし推測は推測として扱うように伝えるとよいでしょう。
 
中には、事実をそのまま転記するグループもあるかと思います。また文章が短く、要領を得ないこともあるでしょう。
そのような場合は、「なぜ、そんなことをやったのか?」と少し突っ込んでください。
 
今回の事故であれば、こんな問になるでしょうか。
「なぜエレベーターピットの上で鉄板だけ敷いて、作業していたのか?」
「なぜ鉄板が外れたのか?」
 
記事にはこの答えはありません。そのため推測になりますが、原因を考えることは、同種の失敗を防ぐために大事なことです。
原因を自分たちで洗い出せば、同様の状況になった時、リスクを思い出す可能性があります。
 
1つ注意点。
深く考えてもらうために、突っ込んだ質問をするのはよいですが、誘導しないようにしてください。
「こんなこと考えられるんじゃない?」などの質問は、自分たちで考えることを妨げます。
 
3.対策の検討 資料P4
(演習)
 
洗い出した原因・問題点の内、リスクポイント(優先度)が高いから、対策・再発防止策をグループ内で話し合い、記入しましょう。
対策は「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」とリスク見積もりも行います。
(10分)
 
対策は少なくとも2つ検討してもらいましょう。
 
このケースワークは、リスクアセスメントにもなり、今後の対策を考えてもらいます。
そのためKYのような対策にならないようにすることが大事です。
 
KYのような対策とは、「保護具を着ける」とか「手元足元注意」、「監視人を付ける」などです。
これらも大事ですが、今回はもっと根本解決になる方法も考えてもらいましょう。
そのため、新しい作業方法、設備を変える、機械を導入するなど、費用がかかる方法やすぐには実現できない方法も検討に加えます。
 
例えば、今回の事故では、「地下4階から地上20階まで、エレベーターピットに足場を組む」という案が出てきてもOKです。
現実的には、難しいだろうなと思うことでも、制限なく対策案を考えることが大事なのです。
 
対策に対し、「いつまでに」「誰が」「何を」「どのように」と考えるのは苦労すると思います。教育担当者はサポートしてあげて下さい。
 
対策が出てきたら、次は自分たちの現場に置き換えて考えてもらいます。
 
(演習)
 
私たちの作業場で墜落の危険がある場所はどこか、どのように対策するかをグループ内で話し合い、記入しましょう。
(10分)
 
事故の教訓を自分たちに置き換えてもらいます。

中には、地上でしか作業しないから墜落の危険はないという業者もいるかもしれません。このような業者でも、作業場全体を見て、危険な箇所がないかを考えてもらいます。
 
この作業場では、墜落危険はないかもしれませんが、別の仕事ではあるかもしれません。演習で墜落の危険箇所などを考えることは、将来の事故を防ぐことにもなるのです。
 
演習を終えたら、グループごとに発表してもらうのがよいですね。
 
この演習が、今回引き出したいコミットメントです。

もしかすると緩い対策もあると思います。緩いものがあれば、コメントで少補足してもよいかと思います。
 
発表の時に注意点ですが、どんな内容であっても、否定しないで下さい。
否定されるとやる気をなくし、反発します。次回から参加しなくなります。
 
発表してもらったら、まず感謝する。そして気になることがあれば、「◯◯も気にしてみると、さらに良いかもしれませんね。」と少し付け足すくらいにしておきましょう。
 
決して否定したり、笑ったりしないで下さい。
 
4.クロージング
改めて、各業者が資料P5で書いた内容を見てもらいます。
その上で、墜落事故防止に向けての、コミットメントをとりましょう。
 
コミットメントに対し、元請け(管理者)として、協力や援助できることがあれば、伝えましょう。
そして足場の点検表などのチェックシートの活用についても指示しましょう。
危険箇所を見落とさず、自分たちで改善できない場合は報告してもらいます。
 
元請け(管理者)は、報告された内容を放置せず、対応しなければなりません。
報告したのに、変わらないでは信頼は得られません。
もし即座に対応ができないのであれば、そのことを伝えましょう。その上で、いつまでに対応するか、代替案を示すことが大事です。
 
墜落事故防止は、一方だけの努力ではなく、全員の協力で実現できることなのです。
協力して事故防止に努めるという態度が、信頼を得ることになります。
 
最後に、ポイントを伝えます
 
1.墜落危険箇所を発見、対策案を報告してしてください。
 
2.墜落防止柵などは点検のチェックリストを漏れなく記入し、予防に努めましょう。
 
演習時間によりますが、大体1時間くらいの教育になるのではないでしょうか。
実際にやってみての感想
演習時間の管理がポイントになります。
 
資料3、4、5は記入に時間がかかります。
 
また記事に情報が多くないので、事実のピックアップに苦労するようです。
少し考えるヒントを出さないと、停滞するので様子を見ながらサポートしてあげて下さい。
 
最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
 
自由にダウンロードしていただいても構いません。
 
ただこの教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。
 
 
 
 
参考までに、墜落事故の事故事例などです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
他多数あります。
 
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