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車両系建設機械の主たる用途以外の使用

      2017/01/09

車両系建設機械は、様々な用途を持った機械があります。

※末尾に追記があります。

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大きな用途としては、次の6種類あります。

 1. 整地・運搬・積込み用機械
 2. 掘削用機械
 3. 基礎工事用機械
 4. 締固め用機械
 5. コンクリート打設用機械
 6. 解体用機械


原則として、機械はこれらの用途に限られています。

ただし、ショベルカーなどでは、掘削用バケットのアタッチメントを取り替えて、解体用として使用するなどはあります。
とはいえ、アタッチメントを取り替えて使用するのも、主たる用途内の使用であるといえます。

しかし、作業では、地形や状況などが千差万別のため、常に意図したとおりに事が進むとは限りません。
時として、どうしても用途外の使用をせざる得ない状況も起こります。

今回は、そんな車両系建設機械で、本来の用途以外の使用についてです。

先に書いておきますが、機械の本来の用途、つまり主た用途以外の使用は制限されていることは覚えておいて下さい。
一部、どうしても仕方ない場合に、例外として使用することができるだけです。


主たる用途以外の使用とは、どんな使用法を指すのでしょうか。

それは、荷物の吊上げ作業や昇降装置に人を乗せる作業等のことです。

用途外の使用については、安衛則第164条の規定されています。

【安衛則】

(主たる用途以外の使用の制限)
第164条
事業者は、車両系建設機械を、パワー・ショベルによる荷のつり上げ、
クラムシェルによる労働者の昇降等当該車両系建設機械の
主たる用途以外の用途に使用してはならない。

2 前項の規定は、次のいずれかに該当する場合には適用しない。
  1)荷のつり上げの作業を行う場合であって、次のいずれにも
   該当するとき。

   イ 作業の性質上やむを得ないとき又は安全な作業の
     遂行上必要なとき。
  
   ロ アーム、バケット等の作業装置に次のいずれにも該当する
     フック、シャックル等の金具その他のつり上げ用の器具を
     取り付けて使用するとき。
  
   (1)負荷させる荷重に応じた十分な強度を有するものであること。
   
   (2)外れ止め装置が使用されていること等により当該器具から
      つり上げた荷が落下するおそれのないものであること。

   (3)作業装置から外れるおそれのないものであること。

  2)荷のつり上げの作業以外の作業を行う場合であって、
   労働者に危険を及ぼすおそれのないとき。

3 事業者は、前項第1号イ及びロに該当する荷のつり上げの作業を
  行う場合には、労働者とつり上げた荷との接触、つり上げた荷の
  落下又は車両系建設機械の転倒若しくは転落による労働者の危険を
  防止するため、次の措置を講じなければならない。

  1)荷のつり上げの作業について一定の合図を定めるとともに、
  合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること。

  2)平たんな場所で作業を行うこと。

  3)つり上げた荷との接触又はつり上げた荷の落下により
   労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を
   立ち入らせないこと。

  4)当該車両系建設機械の構造及び材料に応じて定められた
   負荷させることができる最大の荷重を超える荷重を掛けて
   作業を行わないこと。

  5)ワイヤロープを玉掛用具として使用する場合にあっては、
   次のいずれにも該当するワイヤロープを使用すること。

   イ 安全係数(クレーン則第213条第2項 に規定する
     安全係数をいう。)の値が6以上のものであること。

   ロ ワイヤロープ一よりの間において素線(フィラ線を除く。)の
    うち切断しているものが10パーセント未満のものであること。

   ハ 直径の減少が公称径の7パーセント以下のものであること。

   ニ キンクしていないものであること。
   
   ホ 著しい形崩れ及び腐食がないものであること。

  6)つりチェーンを玉掛用具として使用する場合にあっては、
   次のいずれにも該当するつりチェーンを使用すること。

   イ 安全係数(クレーン則第213条の2第2項 に規定する
     安全係数をいう。)の値が、次の(1)又は(2)に掲げる
     つりチェーンの区分に応じ、当該(1)又は(2)に掲げる
     値以上のものであること。

   (1)次のいずれにも該当するつりチェーン 4

    (i)切断荷重の2分の1の荷重で引つ張った場合において、
       その伸びが0.5パーセント以下のものであること。

    (ii)その引張強さの値が400ニュートン毎平方ミリメートル
      以上であり、かつ、その伸びが、次の表の上欄に掲げる
      引張強さの値に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上と
      なるものであること。

引張強さ(単位 ニュートン毎平方ミリメートル) 伸び(単位 パーセント)
400以上630未満 20
630以上1,000未満 17
1,000以上 15

   (2)(1)に該当しないつりチェーン 5

     ロ 伸びが、当該つりチェーンが製造されたときの
       長さの5パーセント以下のものであること。

     ハ リンクの断面の直径の減少が、当該つりチェーンが
       製造されたときの当該リンクの断面の直径の
       10パーセント以下のものであること。

     ニ き裂がないものであること。

   7)ワイヤロープ及びつりチェーン以外のものを玉掛用具として
    使用する場合にあっては、著しい損傷及び腐食がないものを
    使用すること。


主たる用途以外の使用、つまりショベルカーによる荷物の吊り上げ作業、クラムシェルによる人の運搬を行うことは、原則できません。
しかし、どうしても行わざるを得ない場合のみ、できます。

ちなみにクラムシェルとは、先端部がショベルカーのバケットを二枚向かい合わせにしたようなもので、深い部分の土を掘って、掴むことができる機械です。
基礎掘削用に使われる機械です。
クラムシェル

        クラムシェル

このような主たる用途以外の使用を行うのは、作業の性質上やむを得ないとき、または安全な作業の遂行上必要なときに限ります。

どういった時に行うことができるかというと、本来吊り荷作業は、移動式クレーンで行いますが、移動式クレーンを設置でできないほど、地盤が緩い場所や狭い場所、また機械が行き交っているので、移動式クレーンを設置していまうと、危険がましてしまう場合などが考えられます。

またこの条件も満たさなければなりません。使用する器具は、十分な強度を持ち、外れ止めを備えるなどでなければなりません。

吊り荷作業以外の用途で使用する場合は、労働者に危険を及ぼすおそれがないことが条件になります。

最も多く行われる主たる用途以外の使用法は、ショベルカーでの吊り荷作業です。
そのため、吊り荷作業については、細かく規定があります。
本来の使い方とは異なるので、作業方法にも機械にも無理が生じます。
この無理によって、機械が転倒したり、周辺で作業している労働者に危険を招いたりしてはならないというのが、重要な事です。

ショベルカー等で吊り荷作業を行うには、次の安全確保措置をとらなければなりません。

1.荷の吊上げの合図を決め、合図者を指名し、その者に合図させる。
2.平坦な場所で行う。
3.吊り荷と接触、機械と接触、吊り荷の落下のおそれのある箇所は、労働者の立入禁止とする。
4.定格荷重以上の重さは吊ってはならない。
5.ワイヤロープやチェーンなどの玉掛け用具は、使用条件を満たすこと。


移動式クレーンも合図を統一する必要がありましたが、車両系建設機械の吊り荷も合図を決めなければなりません。また合図者を指名する必要があります。

平坦な場所でというのは、ただでさえ吊り荷用の機械ではないので、安定した場所で行わなければならないということです。

その他は、移動式クレーン等でも満たさなければならない条件ではありますね。

吊り荷重については、特に重要です。
元々吊る機能は後付なのですから、あまり重いものは吊れません。
基準としての吊り荷重は、バケットを備えているものであれば、表示容量(平積みm3)の1.8倍までの重量です。
0.1m3の容量を備えたバケットであれば、土砂換算を1m3→1.80トンとすると、1.80(t)×0.1(m3)×1.8=0.324(t)。
約300キロが吊ることができる目安です。
しかしこれには、バケット自身の重さは含まれていないので、その分は控除する必要があります。

また作業半径によって、吊れる重さは変わります。
アームやブームを遠くまで伸ばすと、吊れる重さは小さくなります。

そのような条件を検討した上で、吊り荷の重さを検討しなければなりません。

そして、どんなに大きなショベルカーであっても、1トン以上のものを吊ってはいけません。

能力以上に重いものを吊ると、簡単に倒れてしまいます。だから吊り荷重には、慎重に慎重にです。

条文に規定されいてるのは、以上のことですが、それ以外にも注意点はあります。
書き出してみると、次のとおりです。

1.有資格者による作業とする。
2.事前に作業方法や手順を決め、作業員に周知する。
3.十分な能力を持った機械を選定する。
4.フックなどを事前に点検する。


車両系建設機械の資格は、特別教育または技能講習の修了が必要になります。
これに加えて吊り荷作業ですので、玉掛けと小型移動式クレーンの特別教育または技能講習の修了が必要になるのです。

作業については、事前に方法等を決めておく必要がありますね。

十分な能力を持った機械でないと、吊り荷で傾いて転倒してしまいます。またワイヤーをかけるフックに強度がないと、作業途中で折れてしまうなんてこともあり得ますね。
使う機械の選定は、運転者と周辺の作業員の安全のためにも大切です。

最近は、クレーン能力を持ったショベルカーなどが販売されています。
これは3トン未満の移動式クレーンとして使用し、車両系建設機械と移動式クレーンの構造規格を持ったものです。
アームの先端には、最初からフックを備えており、クレーンモードの際はパトライトが回るなど、周囲に分かるような機能を備えています。
さらにクレーンモードの際は、旋回速度が遅くなるのも特徴です。

用途が移動式クレーンも兼ねているので、車両系建設機械としての特定自主検査に加え、移動式クレーンの定期自主検査も受けなければなりません。
なかなか維持管理するのも大変ですね。

このような機能を持った機械もありますが、原則として、主たる用途以外の使用はしてはならないのです。

移動式クレーンが使えるところでは、移動式クレーンを使いましょう。
わざわざ移動式クレーンを持ってくるのが手間だからという理由で、ショベルカーで荷を吊るのはダメなのです。
理由は、言うまでもありません。用途が異なるので、事故になる可能性が高くなるからです。

ショベルカーには掘削するなどの機能があります。
例外的に使うことも可能ではありますが、その分リスクもあり、細心の注意を払って作業に当たらなければならないことも理解しておかなければなりません。

※追記

平成12年に労働省(現厚生労働省)労働基準局安全衛生部安全課長より事務連絡として、クレーン機能を備えた油圧シ ョベル等の車両系建設機械の法令上の位置付け、クレーン作業、資格関係等について示されています。

この解釈により、移動式クレーン機能付きショベルカーは、用途外使用ではなく、移動式クレーンとして扱われています。



まとめ。

【安衛則】

第164条
車両系建設機械を、荷のつり上げ等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。
ただし、やむを得ず使用する場合は、相応の措置をとること。

 

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