車両系建設機械の点検
2015/05/30
車両系建設機械を、安全に使用するためには、常日頃手入れを行うなど、維持管理が大切です。
そして、定期的に異常がないかなど、点検を行わなければなりません。
車両系建設機械は、移動式クレーン等と同様に定期的に点検することが義務付けられているのです。
ショベルカー等の機械は、土木工事などで使用頻度が非常に多いです。
しかも、土や泥などを相手にし、天候も雨や雪でも働きます。
非常に過酷な状況で働く機械です。
もちろんそのような環境で使用されることを前提して、タフに作られています。
しかしながら、消耗する部分もあれば、壊れるところもあります。
車も手をかけてあげれば長持ちしますね。
壊れたままだと、車検も通りません。
車両系建設機械も同様です。
定期点検は、正常な状態を確認するものですが、目的は安全に使用するためです。
それは同時に機械を長持ちさせるためにも役立つことなのです。
車両系建設機械の点検は、大きく3種類あります。
1.年次検査(特定自主検査)
2.月次検査
3.作業前検査
年次検査は、特定自主検査という特別な検査になります。
車両系建設機械の点検については、安衛則に規定されています。
【安衛則】
(定期自主検査の記録) 第169条 事業者は、前2条の自主検査を行ったときは、次の事項を記録し、 これを3年間保存しなければならない。 1)検査年月日 2)検査方法 3)検査箇所 4)検査の結果 5)検査を実施した者の氏名 6)検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、 その内容 |
車両系建設機械は、1年以内に1回の年次点検と1ヶ月以内に1回の月次点検を行わなければなりません。
点検内容は、弁類や駆動系、操作系、走行系の各所機械について行います。
年次点検は細かくチェックしますが、月次点検では、よく使用する箇所について損傷の有無をチェックするのが中心です。
点検はチェックしたらいいかというと、そういうわけではありません。
必ず記録に残さなければなりません。
そして記録は、3年間は保存しなければならないので、きちんと管理しましょう。
月次検査は、社内で行われることが多いと思いますが、年次点検は、外部の整備会社に委託するなどして行うことが多いと思います。
年次の定期自主点検は、車両系建設機械以外でも規定されている機械は多いです。
しかし車両系建設機械の年次点検は、他の多くの点検とは異なり、やや特殊な点検を行わなければなりません。
どのように特殊かというと、特定自主検査というものを受けなければならないのです。
特定自主検査を行う機械には、いくつかの種類があり、次のとおりです。
1.動力に駆動されるプレス機
2.フォークリフト
3.施行令別表7にある車両系建設機械
4.不整地運搬車
5.高所作業車
これらの機械については、特に危険が大きく、しっかりと点検しなければならないということで、誰でも点検してもよいというものではありません。
点検を行うのは、有資格者でなければならないのです。
少し話はそれますが、特定自主検査についてよく混同されやすいことがあります。 対象にプレス機は含まれますが、シャーは含まれません。
またフォークリフトと不整地運搬車は含まれますが、それ以外の車両系荷役運搬機、例えばフォークローダーやショベルローダーなどは特定自主検査ではないということです。
それはさておき、車両系建設機械の特定自主検査について規定している第169条の2は、別の条文の読み替えなので、何だかよく分かりません。
そのため、元になった条文を見てみます。
フォークリフトの特定自主検査について規定した第151条の24が、元の条文なので、これを見てみます。
検査を行うのは、一定の実務経験を積み、さらに指定研修を修了したものでなければなりません。
検査実施者自体の、ハードルが非常に高いと言えます。
移動式クレーン等は労働基準監督署等による性能検査が義務付けられています。
特定自主検査は、その性能検査に次ぐものだと言えますね。
定期自主点検は、きちんと点検できるならば自社で行うことも可能です。
しかし、特定自主検査は、自社で行うのは難しいかもしれません。
有資格者がいる整備会社で、点検してもらうのが確実かもしれませんね。
特定自主検査に合格すれば、検査証が貼り付けられます。
この検査証がない、もしくは有効期限が過ぎているもの使うのは控えなければなりません。
車を車検切れで運転するようなものです。
必ず、特定自主検査の有効期限はチェックし、継続して使用するためにも、期限切れする前に検査するようにしましょう。
なお、特定自主検査を受ける車両系建設機械について、重量による区分は設けられていません。
移動式クレーンであれば、3トン未満は性能検査の対象外となる規定はありますが、特定自主検査を受ける機械は、そういった規定はありません。
つまり車体重量関係なく、車両系建設機械であれば、特定自主検査を受けなければならないことに注意しましょう。
さて、年次や月次以外にも、点検を行わなければなりません。
それは、日常点検、つまり作業前の点検です。
(作業開始前点検) 第170条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、 その日の作業を開始する前に、ブレーキ及びクラッチの機能について 点検を行なわなければならない。 |
(補修等) 第171条 事業者は、第167条若しくは第168条の自主検査又は前条の点検を 行なった場合において、異常を認めたときは、直ちに補修 その他必要な措置を講じなければならない。 |
その日の作業前に、目視やブレーキやクラッチなど、よく使う箇所について点検しなければなりません。
異常があるままで使用すると、危険ですからね。
この作業前点検は、あまり時間をかけてられません。短時間で行うのが通常です。
しかし何の気なしに行っていると、漏れもあります。
必要最低限の箇所を点検するためにも、点検ポイントのチェックシートを用いるのがいいですね。
この点検簿も、特定自主検査記録や月次点検記録と合わせて保存しておくと、後々まで機械の状態管理に使えます。
さて、もし点検時に異常を発見したら、どうしたらいいでしょうか。
気づかぬふり?放置?
もちろん、それはダメです。
きちんと補修しましょう。
消耗品がダメになっていたら交換し、故障している箇所があれば、修繕します。
きちんと、正常に稼働する状態にしておかなければなりません。
車両系建設機械は使用頻度は多いですが、維持管理には非常にコストも手間もかかります。
きちんと正常に動いてこそ、運転者も周囲の作業者が安全に作業できる最低限のラインをクリアできるのです。
どこか故障している機械であれば、危険極まりありませんよね。
整備されていない車を安心して乗ることができるでしょうか?
助手席に安心して、乗ることができるでしょうか?
建設業などでの機械作業は、激突等の危険が常につきまといます。
ただでさえ危険な作業。
整備も点検もされていない機械に乗るのは、整備されていない車に乗るのと同じくらい、もしかするとそれ以上に危険な状態なのです。
整備のコストは、安全のためのコストです。
機械の整備は、安全な作業環境作りの一環とも言えます。
しっかり、確実に点検し、安全に作業できる環境を作るのは事業者の責務です。
まとめ。
【安衛則】
第167条 車両系建設機械については、1年以内ごとに1回、定期に自主検査を行わなければならない。 |
第168条 車両系建設機械については、1月以内ごとに1回、定期に自主検査を行わなければならない。 |
第169条 事業者は、前2条の自主検査を行ったときは、記録して、3年間保存しなければならない。 |
第169条の2 両系建設機械の年次点検は、有資格者による特定自主検査とする。 |
第151条の24 フォークリフトの年次点検は、有資格者による特定自主検査とする。 |
第170条 車両系建設機械はその日の作業を開始する前に、点検を行なわなければならない。 |
第171条 自主検査又は前条の点検で、異常を認めたときは、直ちに補修等の措置を講じなければならない。 |