○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

鼠川、シンボウたまらんことになる

entry-511

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第67話「鼠川、シンボウたまらんことになる。 」
電気屋の猪頭は、建物の電気などを行っています。
犬尾沢とは昔からの知り合いで、よく現場の仮設電気の設置などで呼ばれたりします。

「おう、ピギくん!今日はここの電気頼むよ。」

「ええ。よろしくお願いします。
 で、どこまで引くんですか?」

「うん、ちょっと電柱からは遠いんだけど、大丈夫?」

現場事務所と、現場内に置く引込盤の位置は、電柱から距離がありました。
受電する電柱を建てても、少し遠いです。

「うーん。引込柱はともかく、そこからケーブルを引いてこないといけないね。
 電線管をはわせて、中にケーブルを通すよ。
 1人では入線が難しいから、できれば手伝ってほしんだけど。」

「そうか。じゃあ、1人手伝いを出すよ。」

「ありがとう。それじゃ材料の準備をして、また来るよ。その時に手伝いをお願いします。」

こうして、現場での段取りを終えた猪頭は、現場を離れ材料などの準備に向かいました。

小一時間ほど経つと、また現場に戻ってきました。
車から材料を降ろすなどして、作業の準備をしていると、鼠川が近づいてきました。

「よう、猪頭くん。犬尾沢に手伝うように言われたから、来たよ。」

「あ、鼠川さん。お願いします。」

「何からやっていけばいい?」

「このドラムに巻いたケーブルを一緒に下ろしてもらっていいですか?」

「おう。結構太いケーブル使うんだな。」

「ええ、ここはそうしてくれと言われたんですよ。」

「そうか。よいしょっと。どこに置く?」

「とりあえず、横にしておいてください。
 で、次はこの電線管を下ろして、伸ばしていくので、片方を押さえておいてもらっていいですか?」

「うん。ここでいいの?」

「ええ、これを延ばして、固定してくるので、しばらく押さえてもらってていいですか?」

「わかった。しばらくここにいるよ。」

鼠川に電線管の片方を押さえさせ、猪頭は電線管を延ばしていきました。
距離は数十メートルあります。電線管を延ばし終えると、引込盤を取り付ける柱に固定しました。
そして、鼠川のところまで戻ると、そこにあった電気の引込柱に括りつけました。

「それじゃ、引込盤を取り付けるので、支えてもらっていいですか?」

鼠川は指示された通り、引込盤を支え、猪頭は柱に固定したのでした。
電線管の両端に引込盤を取り付けると、今度はケーブルを延ばして入線です。

ケーブルは、ドラムに巻かれた状態です。まずはこれを引き出さなければなりません。

「鼠川さん、この棒をドラムの芯棒にして、引き出していきます。棒の支持台の上にのせるのを手伝ってください。」

「この棒は先にドラムに通さないとだな。
  ・・・・よし。それじゃ、2人で持ち上げようか。」

「OKです。それじゃ引き出していきます。」

ケーブルの端に呼び線を取り付け、電線管を通しました。
これを引っ張ることで、ケーブルが電線管の中を入っていくのです。

これで、入線の準備はできました。
猪頭は、電線管の端に立ち、呼び線を掴みます。
もう一方の端では、鼠川がケーブルを掴んでいます。

「それじゃ、引っ張りますので、押してください。

 せーの!」

掛け声を合わせて、ケーブルを引っ張っていきます。

「せーの!よいよい!」

繰り返し、繰り返し引っ張り、電線管の中をケーブルが通過していきます。

ケーブルの端が出てくると、ある程度の余裕がでるまで引き出しました。

「鼠川さん、OKです。」

猪頭はそう言うと、鼠川の元に戻り、ケーブルを切断しました。

「猪頭くん、終わりかな?」

「あ、はい。あとは1人でできます。」

「そうか。じゃあ、このドラムを片付けて、わしは作業に戻るよ。」

「すみません。ありがとうございます。」

そういうと、鼠川は支持台からドラムを下ろしました。
ドラムから芯棒を抜いた時でした、芯棒は鼠川の手を滑り、足の上に落ちたのでした。

鼠川は安全靴を履いていましたが、芯棒が落ちたところは、鉄板のない部分だったのです。

「いてて!」

鼠川は足を抱えてしまいまいた。

「鼠川さん、大丈夫ですか?」

しばらく悶絶していた鼠川ですが、

「とりあえず大丈夫。」

と落ち着いたようでした。

「どうも、力が衰えているのか、手が滑っちゃったよ。」

痛いやら照れているやらの様子の鼠川。

大丈夫そうなのを確認した猪頭は、電気工事に戻っていったのでした。

「ダメだな。やはり昔のようにはならないか。」

痛みが落ち着くとともに、ぼそっと呟く鼠川なのでした。

ワイヤーをまとめていたら、足の上に落とす。
長靴の上に落とし、足を痛める。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回のヒヤリ・ハットも電気屋の猪頭が登場です。
しかし猪頭というより、一緒に作業をしていた鼠川に降りかかったものです。

実はこのヒヤリ・ハットは先日私の現場でも起こったものです。

電気ケーブルのドラムを引き出す時の芯棒を落として、足にぶつけた人がいたのでした。

本人はしばらく悶絶していましたが、怪我はないようでした。

鼠川もしっかり棒をつかめていなかったのか、滑り落としてしまったのでした。
しっかり持つとかの対策になりますが、手元から落として、足に何かがぶつかるというのは少なくないのではないでしょうか。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 電気ドラムの芯棒を足に落とした。
対策 1.手袋などをつけ滑らないように持つ。
2.安全靴を履く。

鼠川は安全靴で鉄板のはいっていないところにぶつけて悶絶しましたが、鉄板がなかったら、指先を骨折したりもありえたでしょう。そのため普段から安全靴を履くことが大事です。

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