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社員を守ることは企業の義務!労働安全衛生法の基本的な考え方について

社員を守ることは企業の義務!労働安全衛生法の基本的な考え方について

労働災害イメージ
労働災害を防ぐことを目的として法律として、労働安全衛生法があります。
この法律は全ての企業と関係があります。
もしかすると法令違反があるのに、気が付いていないかもしれません。
コンプライアンスを遵守することは、経営者にとって必須事項です。
その意味で、経営者は知らなければならない知識といえます。
 
労働安全衛生法とはどのような法律なのか。その基本について理解を深めましょう。
 
今日も無事にただいまブログでも最初に書いた記事と共通しています。
 
目次

1 企業には労働者保護の義務がある

1.1 労働災害が起こったら誰に責任?

労働災害は、事業活動によって生じた災害のことです。災害の結果として、社員(=労働者)は、負傷する、または病気になり、場合によっては命を落とすこともあります。
厚生労働省では、毎年労働災害の統計データを公表しています。2021年のデータでは、死亡災害は867人、死傷災害は149,918人となっています。死傷災害は、2020年からはコロナの影響もあり、増加傾向にあります。
 
労働災害が発生したとき、だれに責任があるのでしょうか。
被災した労働者がうっかりしていたからだ・・・ ミスをしたからだ・・・ だから労働者に責任がある・・・では決してありません。
 
労働災害が発生したとき、その責任は事業者にあります。

1.2 労働者保護は事業者の責任

労働災害を防止する目的の法律として、労働安全衛生法があります。
この法律にある大半の条文は、「事業者は」で始まり、「しなければならない」で終わります。
つまり、はっきりと法律遵守の主体は、事業者だと書かれているのです。
 
事業者とは、会社であり、そして経営者のことです。
つまり、会社は社員を労働災害から守る義務があるのです。
 
近年問題になっている、過重労働により労働者の心身を損なうことは、この義務に違反しているのです。
 
社員・労働者を守ることは、会社・経営者の責任です。
これは重要な経営課題と言えます。
 

2 労働安全衛生法とは

2.1 法令の目的

労働者保護を目的として、労働安全衛生法は1972(昭和47)年に制定されました。約50年前の出来事です。
この制定以前も、旧労働安全衛生規則など労災防止のための法令は存在していました。
しかし、いずれも独立した省令などの扱いであるなどして、体系的ではありませんでした。
 
そのため、企業も労働災害防止についての取り組みは遅れ気味で、安全衛生よりも生産性を重視する傾向が強かったのです。
結果的に、労働災害も多く、そして一向に減る気配がなかったのでした。
 
労災推移
 
労働災害のピークは、1953(昭和38)年です。1年間の死亡者6,712人、死傷者481,686人。死傷者数について、現在は休業4日以上を基準としていますが、当時は休業8日以上でした。それでもこれだけ多くの方が労働災害にあっていたのです。
ちなみに、労働安全衛生が制定された1972年は死亡者5,631人、死傷者324,435人でした。
 
労働災害により、労働者が死亡または死傷することを防止すること。この目的のために労働安全衛生は制定されました。
 
ここに至るまでも紆余曲折があったようです。制定までの過程を知ることは、安全衛生の大切さを理解する上でとても効果的です。
私(角田)は、安全講話などで、労働安全衛生法について話すこともあります。そのとき成立までの歴史の話をするのですが、非常に興味深く聞いてもらっています。
しかし成立までの話は、今回と別のお話。また別の機会に書きましょう。
 
労働安全衛生の目的については、第1条に書かれています。
 
労働安全衛生法
第一条(目的)
この法律は、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。
ポイントは次の通りです。
 
労働安全衛生法の目的と手段
 
労働安全衛生第1条についての詳しい解説は別の話。また別の機会に書きましょう。
 
制定後は効果を示しました。10年で死亡災害が約半分になったことは、大きな成果といえるでしょう。
 
労働安全衛生法成立後の労災推移
 

2.2 労働基準との違い

さて、第1条目的の中には、「労働基準法と相まつて」とあります。つまり労働安全衛生法と労働基準法は、兄弟姉妹のような、非常に関係が深いといえます。
いずれの法も、目的とするのは労働者の保護です。異なるのは、保護として扱う範囲です。
労働安全衛生法が成立するまでは、安全衛生は労働基準法の一部でした。しかもその扱いは第5章の第43条から第55条のたった13条にすぎませんでした。
労働安全衛生法成立後、労働基準法の第5章は全て削除されています。
 
とても簡単にまとめると次のような区分になります。
 
〇労働基準法
労働者の労働条件に関して最低限守るべき基準を定める。
雇用契約、法定労働時間(時間外労働、休日労働なども含む)、休日・有給休暇、賃金、就業規則などの規定。
 
〇労働安全衛生法
労働者が安全かつ健康に働ける環境について定める。
危険または有害性の基準、安全及び衛生管理、健康管理、リスクアセスメントなどの規定。
 
どちらも安全に健康的に働くためには欠かせないものです。
近年の長時間労働などの問題は、働き方改革として、いずれの法律でも規制があります。
 

2.3 関連する施行令・規則

労働安全衛生法は、12章の構成で全123条で構成されています。安全衛生はこの程度の条文で網羅しきることはできません。
そのため労働安全衛生法の条文を補足するものとして、命令があります。
政府からの命令が政令、省庁からの命令が省令です。ちなみに労働安全衛生法の管轄は、厚生労働省になります。
 
政令
・労働安全衛生法施行令
 
省令
 
・安全衛生全般
労働安全衛生規則
 
・安全に関する専門則
・ボイラー及び圧力容器安全規則
・クレーン等安全規則
・ゴンドラ安全規則
 
・衛生に関する専門則
・機溶剤中毒予防規則
・鉛中毒予防規則
・四アルキル鉛中毒予防規則
・特定化学物質障害予防規則
・高気圧作業安全衛生規則
・電離放射線障害防止規則
・酸素欠乏等防止規則
・事務所衛生基準規則
・粉じん障害防止規則
・石綿障害予防規則
 
また労働安全衛生と非常に関係が深い法律としては、「じん肺法」や「作業環境測定法」などもあります。
 
これら内容について、今回と別のお話。また別の機会に書きましょう。
 

2.4 管轄する機関

労働安全衛生を管轄しているのは、中央は厚生労働省で、都道府県では労働局となっています。
そして都道府県内でもエリアごとで管轄しているのが労働基準監督署です。
最も身近なところが、労働基準監督署ですね。一部でハローワークが併設しているところもあります。
 
労働基準監督署は、労働基準、安全衛生を監督指導しています。
また様々な届け出を出すときにも関係があります。
労働災害が発生したときには、監督官は警察用に捜査する権限も持っています。
 

3 事業者の責任

3.1 義務一覧

事業者の義務については、次のようなものがあります。
 
・安全衛生体制を整える
・労働災害防止のため安全衛生の措置をとる
・快適な職場環境を整える
・安全衛生教育
・健康保持、健康増進のための措置
 
その他、元方事業者としての義務などもありますが、いずれも労働者の安全と健康を守るためであることには違いはありません。
 
事業者の責任については、今回と別のお話。また別の機会に書きましょう。
 

4 違反の場合の罰則

4.1 労働災害が発生していなくても違反になる

労働安全衛生の特徴は、必ずしも違反と労災は関係しないということにあります。
言い換えると、労災が発生していなくとも、違反になるということです。
 
労災は違反が存在した結果発生します。
そのため、仮に監督署の作業場点検(臨検)では、労災が発生していないのに、「第〇〇条違反です」と言われることがあります。
臨検では、是正を求められますので、対応すれば、よほど悪質でない限り書類送検などはありません。
 
労災が発生しなければ、違反がないということではありません。
違反の有無を確認し、是正することが事業者の責任なのです。
 

4.2 罰則は

労働安全衛生法違反には罰則があります。
罰則があるということは、裁判などもあるということです。
 
労働災害が発生し、監督署の捜査の結果、違反があれば書類送検になります。
書類送検後は、検察の取り調べがあり、起訴か不起訴かの判断となります。
起訴の場合は、裁判の結果、罰則が科せられます。
 
罰則は例えば次のようなものです。
 違反内容
該当する主な条文
罰則
作業主任者未配置等違反
第14条
6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金
安全衛生基準違反
第20条、第21条他
6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金
無資格運転
第61条
6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金
労災報告義務違反
第100条
50万円以下の罰金
誰が送検され、罰則を受けるのかというと、いうまでもなく事業者です。つまり会社と経営者(社長)です。
さらに前科がつくことも忘れてはいけません。
 
罰金自体は大きな金額ではありません。しかし失う信用は金額以上となります。
 
またもう一つ、労働安全衛生第122条では、両罰規定というものがあります。
 
労働安全衛生法
第百二十二条 
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第百十六条、第百十七条、第百十九条又は第百二十条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
仮に労災の原因が、労働者に責任があったとしても、事業者も同等の罰則が科せられるというものです。
 
労災において、事業者の責任はそれだけ大きいということなのです。
 

5 安全衛生は企業価値を高める活動

5.1 企業に求められるコンプライアンス

近年、SDGsを掲げる会社が増えてきました。持続可能な社会のため、主に環境問題への取り組みなどを目標として掲げています。
企業の責任して、環境への取り組みなども重視されてきたということでもあります。
 
企業の責任は、環境など外部に対してだけのものではありません。
労働環境についても及ぶべきなのです。
 
労働安全衛生についての措置をとることは事業者(会社)の責任です。
仕事は働く人あってこそ、成り立つものです。これを忘れた会社には未来がありません。
 
安全教育センターでは、外資系企業から依頼を受け、コンサルティングも行っています。
そこで聞くのが、海外の投資家は、企業の安全衛生の取り組みも投資判断基準になってきているということです。
そのため国内法のコンプライアンス違反がないかを気にされているのです。
 
すでに企業の価値として、安全衛生にどれだけ尽くしていることが重視されてきているのです。
 

5.2 新入社員が会社に求めるもの

企業の人手不足、高齢化も問題になっています。
リクナビなどでは、新入社員の企業に求めている内容のアンケートが公開されています。
 
見てみると、上位には「労働条件が良いこと」が見られます。
労働条件には、賃金や労働時間などがあげられます。労働条件という観点では、危険があるような仕事は、そもそも選択肢にも入っていないのかもしれません。
 
人手不足に悩む建設業などは昔から3K(危険・きつい・汚い)のイメージが強いです。
採用戦略としても、安全衛生の充実とそのアピールは欠かせないものといえます。
 

6 安全教育センターの取り組み

6.1 企業の安全安心の土台作り

私たち安全教育センターは、30年以上企業の労働災害防止に取り組んできました。80社を超える企業の安全衛生顧問としてコンサルティングを行っています。
安全衛生は、人と企業の土台となるもの、つまり根っこにあたるものだと思っています。
 
安全は大事だけれども、できているか不安がある。そのような声も多く聞きます。
そのような不安を解消し、安全衛生活動を支援することで、社員の安心を作り、企業価値を高める活動しています。
 

6.2 教育・指導で企業価値をアップ

主に行っているサービスとしては、次のものがあります。
 
1.安全衛生指導
2.安全衛生教育
3.労災発生時の対応支援
 
安全衛生指導としては、企業の安全衛生管理の監査、作業場のパトロールを行っています。
安全衛生教育は、作業主任者技能講習、特別教育など、資格に関する教育を行っています。また社内の安全衛生教育も行っています。無資格での仕事は、違反ですので、必要な資格については、本HPもチェックしてください。
そして、労災が発生したとき、企業のダメージを最小にするためのお手伝いをします。必要に応じて、事故現場に行き、監督署などの捜査で立ち会ってサポートもします。
 
労災の発生予防から発生後のケアまで対応しています。
安全衛生にしっかりと取り組んでいることは、今は企業の価値を測るときにも重視されます。
 
安全教育センターの本社がある宮城県などでは、工事の評点で安全教育センターがパトロールを担当しているところも多数あります。
その結果として、高得点をもらっているというお話も聞きます。
 
安全衛生は、企業価値を高める活動なのです。
 
私たちは、今後もHPなどを通じ、人と企業の安心の土台となる安全衛生の情報をお伝えしてきます。
安全衛生、特に法律に関するものは難しいと思われるかもしれませんが、わかりやすくお伝えしてきます。
 
ぜひとも、HPをお気に入りに入れていただき、気になることがあればすぐに参照してもらえればと思います。
 
また安全衛生に関して質問などがありましたら、お問い合わせいただければと思います。
 
 
では、また次の記事にてお会いしましょう。

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